少子高齢化が進み、企業の定年の設定も上がってきています。昭和の時代は一般的に55歳が定年でした。「55歳になったら、もう高齢者だから働けない」というわけではなく、「55歳以降は年金で悠々自適な毎日を送りませう」ということだったのではないでしょうか。人も55歳まで働けば、もう十分だということです。
それが今や定年65歳も珍しくなく、そのうち定年70歳が一般的になるとさえ言われています。「年金はスズメの涙だから、政府を当てにせず、死ぬまで働け」ということのようです。
はじめに
街の美容室を見ても、美容師は皆若そうです。今は40歳、50歳でもとても若く見える人はいますし、ましてや美容師は「容姿の美しさ」にこだわる職業なので、若そうな恰好をして若く見せることが可能なのかもしれません。
とは言え、60歳、70歳の美容師はあまり見掛けないような気もします。美容師も一般的な企業と同じように60歳が定年なのでしょうか?
今回は「美容師の定年は何歳?」問題に鋭いメスを入れ、さまざまな謎や疑問を徹底的に究明します。
そもそも美容師は何歳からなれる
美容師として働くには美容師国家資格の取得が必要です。美容師国家資格試験を受験するには、厚生労働省が指定する美容師養成施設で必要な学科・技能を修めなければいけません。美容学校に入学するには、高校卒業者であること、または高等学校卒業程度認定試験に合格していることが条件となっています。
ただし、中学卒業後に高等学校の課程を有する美容学校に入学するという方法があり、美容師には最短17歳でなることができます。高校を卒業してから美容学校に通った場合、2年通うとして、最短19歳で美容師になれます。
とは言え、「美容師になれる」だけで、実際は17歳、19歳で美容室に採用されたとしても、最初は美容師をサポートするアシスタントとしてキャリアをスタートさせることになります。2~4年と言われるアシスタント期間を経て、スタイリストになれるのは19歳~23歳くらいでしょうか。
美容師の定年は何歳に設定されているのか
美容師が採用されている店に定年が設定されていれば、その年齢が定年ということになります。ただ、美容師国家資格には年齢制限がなく、違反をして取り消し処分を受けない限り、更新しなくても生涯有効です。
つまり、美容師は働こうと思えば、何歳までも続けることができるのです。
美容師は何歳になっても働ける?
実際、美容師は何歳になっても続けることができるのでしょうか。
高齢美容師の仕事を困難にするのは、身体能力の低下です。
美容師の仕事はほぼ立ちっぱなしで行う体力仕事なので、年齢を重ねるごとに辛くなってきます。視力が衰えたり、手先を器用に動かせなくなることもありえます。
また、身体能力は大丈夫でも、若い世代のスタッフやお客様とのやり取りがツラくなったりすることもあるようです。
美容師の定年は40歳?
「美容師の定年は40歳」説というものがあるようです。
プロのスポーツ選手は30代で引退し、コーチや解説者になったりすることが珍しくはありません。スポーツは体力がなければ続けられませんし、勝ち負けが関わってくるので、やはり中年以降の身体能力では若い身体能力にかなわなくなってくるからです。
美容師の仕事は勝ち負けではありませんが、スポーツ選手と同じような感覚のところもあり、多くの美容師が30代から働き方を変えていくようです。そのため、特に若いお客様が多い都会の美容室では40代以上の美容師が少なく、「美容師の定年は40歳」だと言われるようになったのではないでしょうか。
40歳を過ぎてからの働き方
40歳くらいになって、これまでと働き方を変えようと考えた美容師は、どんな働き方を始めるのでしょうか。
独立開業
美容師の中には独立開業を目指す人がいます。
独立開業してやっていくためには、資金も経験も必要なので、美容師になってすぐに独立開業するのはかなり難しいと言えます。
やはり、40代以降になって若いお客様を大勢施術することに気後れを感じる前に、30代で独立開業しておこうという人も多いようです。
もちろん、独立開業しても美容師としてお客様を相手にする人は多いですが、自分の店を持つと、美容師であると同時に経営者でもあります。
最初は美容師と経営者を兼任していても、徐々に美容師業務の担当を減らし、経営に主眼を置くようになる人もいます。
管理職
独立せずに、勤め先の美容室の管理職になり、経営にも携わりながら美容師としても活躍するという人もいます。
チーフ、マネージャー、副店長になったり、支店の店長になったりします。
中には、徐々に美容師業務の担当を減らし、経営に主眼を置くようになる人もいます。
他の美容室に転籍
自分の年代や経験の変化とともに、勤務先の店を移っていく人もいます。
例えば、若いころは時代の先端を行くようなサロンに勤め、30代になると高級志向の美容室に勤め、50代になると地域に根差した庶民的な美容院に勤めるといった感じです。
または結婚、出産など、人生の節目に当たり、自分の生活のリズムを変える必要が生まれ、フルタイム勤務からパートタイム勤務に変え、その後再びフルタイム勤務に戻るといったように、同じ店で働き方を変えていく人もいるでしょう。
働き方を変えるために、自分がこうしたいという働き方ができる店に移っていく人もいます。
フリーランスになる
働き方を自分の自由にするために独立し、開業するのではなく、そのままフリーランスの美容師となる人もいます。
そんな中には、お金に余裕があり、好きなときに好きなだけ美容師の仕事をするという人もいるかもしれません。
福祉美容師になる
福祉美容師は介護を要する高齢者や障がい者にヘアカット、パーマなどを行う美容師です。社会貢献度の高い仕事です。
もちろん、若いころからそういった社会貢献度の高い仕事をしたいと考える人もいます。しかし、一般のお客様を相手にする美容師として活躍した後、培った技術、特に接客術を社会貢献に生かしたいと考える人もいます。
実際、高齢者を相手にする場合、そのサービスの利用者も美容師が自分に近い年代のほうが、気後れしないで楽ということもあります。
福祉美容師として活躍するなら、介護職員初任者研修などのような福祉介護の資格や、福祉理美容士という民間資格を取っておいたほうが有利です。
転職
20代、30代を美容師として大いに活躍して過ごし、「やれることはやりきった」と感じると、40代になって美容師をスパッと辞め、転職して別の仕事を始めたりします。
まとめ
美容師の仕事は何歳になっても続けることができる一方、実際には多くの人が40歳を境に美容師を辞めたり、現場仕事から離れたりしているようです。美容師としての給料のピークが40歳であったり、体力仕事であることがその理由かもしれません。
しかし、働き方を変えて美容師の仕事をとことん続けている人もいるのです。


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