美容師国家資格を取得し、美容室や美容サロンに就職すると、その後はどんなキャリアを歩くことになるでしょうか。
もちろん、人生の歩き方は人それぞれですが、「美容室や美容サロンでは多くの美容師がこういうキャリアを歩く」という基本コースをご紹介します。
美容学校を卒業すると
美容師国家資格を取得すると、美容師になる資格を得たことになります。
しかし、それですぐに美容師としてお客様に満足してもらえる仕事をできるとは限りません。そもそも美容学校で学ぶことは、国家資格取得のための知識や技術であり、実際にお客様に満足してもらえる知識や技術は、さらにより深いレベルなのです。
多くの美容学校卒業生は、美容室、美容サロンに就職します。そして現場で通用する、より深いレベルの確かな技術を身に付けます。
ちなみに、美容師として仕事をできる場所は美容室だけではありません。結婚式場、ヘアメイク事務所などもあります。
訪問美容事務所もあります。介護施設や病院、顧客の自宅などで、高齢や病気などでサロンへ行けない人のヘアカットなどを行います。
美容室だけじゃない就職先
ちなみにアイブロウリスト、カラーリスト、ヘアメイクアップアーティストなどとして働く場合も美容師国家資格が必要です。
アイブロウリストは、眉のスタイリングを行う専門家です。
カラーリストは、ヘアカラーのみを専門で扱う職業のことです。
アイブロウリスト、カラーリストはそれぞれを専門とするサロンや、一般的な美容サロンで働く場合が多いです。
ヘアスタイリング・ヘアセットとメイクを行うヘアメイクアップアーティストは、ヘアサロンやエステサロンに勤めたり、化粧品メーカーやヘアメイク専門のプロダクションなどに所属したり、フリーランスで仕事をします。
また、エステティシャンやメイクアップアーティストになるには美容師国家資格は必要ありませんが、エステやメイクアップの技術と知識を学ぶために美容学校に入学する人はいます。
ですから、美容学校を卒業する人すべてが美容室や美容サロンに就職するわけではありません。
キャリアアップの道すじ
多くの美容師が、美容室や美容サロンに就職してまず目指すのはスタイリストです。そもそも一般的に「美容師」と聞いてイメージするのが、このスタイリストの仕事なのです。
逆に言うと、美容師として美容室や美容サロンに就職しても、すぐに美容師としての仕事をできるわけではないのです。
給料は、もちろんキャリアアップするにつれて増えていきます。
アシスタント
美容師として美容室や美容サロンに就職し、まず最初になるのがアシスタントです。アシスタントという言葉はいろいろな業界で使われていますから、ほとんどの人がすぐ分かるでしょうけど、つまり「助手」「補助」のことです。
仕事はスタイリストの補助業務で、受付や店舗の掃除、カラーやパーマのサポート、シャンプー(洗髪)やドライヤー操作など、多岐に渡ります。ですが、お客様のカットを担当することはできません。
職場は美容室でも、お客様のヘアカットをできないので、いわゆる修業時代の経験だと思うことが肝心です。
修業なので、単に言われた業務を行うだけではなく、自分の時間でカットを練習し、美容師のスキルを高めなければ、早くスタイリストにはなれません。自分と他人を比較してしまいがちな人は、同期入社なのに自分より早くスタイリストになる人が現れると、かなり落ち込むことになります。
一般的にアシスタントの期間は2~4年と言われています。
スタイリスト
スタイリストは、シャンプー、カット、カラー、パーマ、ヘアセットなどの施術を行う美容師のことです。言うなれば、美容学校で学ぶことでの最初の目標が「スタイリストになること」なわけです。
とは言え、スタイリストになってすぐに指名されるようになる、とは限りません。まずは上司や先輩の指示で施術を行います。お客様の満足度が高ければ、常連客となって指名してくれるようになる、かもしれません。「修業の延長」と言っても良いでしょう(そもそも技能職とは「一生修業」だと思いましょう)。
お客様の満足度を上げるためには、施術に関する技術だけではなく、お客様のニーズをつかみ、なおかつお客様に快適に過ごしてもらえるコミュニケーション能力も向上させる必要があります。
店によってはスタイリストになる前に、ジュニアスタイリストというポジションに就くことになるところもあります。また、トップクラスの売り上げに貢献するようになると、トップスタイリストと呼ばれるようになります。
自分自身の常連客ができ、技術に自信がつくと、さらなるキャリアアップを目指すようになります。
主任・チーフ
主任やチーフは、店長の補佐的役割を担う人のことで、具体的には主に、従業員の指導やシフト管理などの業務を行います。飲食店で言うところの副店長です。
管理業務と並行してスタイリストとしての業務も行うのが普通です。後進の指導を行うので、自然と自身の技術も向上します。
店長
店長は、店舗の責任者です。店舗の運営、人材育成、労務管理、売上管理、新規顧客の獲得などの業務を担い、自らお客様に施術をすることもあります。
チェーン展開している大規模店では、店長会議にも出席します。
スタイリストであると同時に、経営者でもあります。店長になるまでには10年以上かかるとも言われています。
ディレクター
スタイリストとしてキャリアを積み上げても店長にならず、トップスタイリストより上のポジションのディレクターと呼ばれるようになる店もあります。
ディレクターは指名数もトップクラスで、売り上げへの貢献度も最高レベルです。
マネージャー
大規模店舗に長年勤め、お客様への施術よりも店舗経営への興味が強まると、マネージャーを目指すようになる人もいます。
マネージャーは、新規店舗を開店するためのマーケティングや営業活動を行ったり、複数店舗の売り上げ管理、人材育成、経営戦略などに携わります。
店によっては、マネージャー業務を行いつつ、お客様への施術もたまに行うという人もいます。
独立開業
美容師として経験を積み、独立して自分の美容室や美容サロンを開く人もいます。
美容師としてだけではなく、経営者、マネージャーとしての能力も必要で、資金面を含めた開店準備はとても大変です。
キャリアアップに有利な資格
美容師になるには美容師国家資格が必要ですが、美容師になってからキャリアアップするにも、あると有利という資格があります。その1部をご紹介しましょう。
こうした資格を持っていると、仕事の幅が広がり、お客様の信頼を得られるようにもなり、キャリアアップにつながります。また、転職する場合にも武器になります。
ヘアケアマイスター
ヘアケアマイスターは、日本ヘアケアマイスター協会による認定制度です。
認定されるには、毛髪科学や毛髪カウンセリング、皮膚科学、パーマ剤などの知識、コミュニケーションやアドバイスのスキルが必要です。
美容師国家資格か理容師国家資格を取得し、現役で働いている人のみ認定試験を受験できます。
カラーコーディネイター検定
日本カラーコーディネーター協会によるカラーコーディネーター検定、色彩検定協会の色彩検定など、色彩関係の資格を持っていると、カラーの仕事で重宝されます。
正確な色彩の知識を持っていると、お客様に的確なアドバイスを提供できます。
ネイリスト
ネイルケアやネイルアートなどを行うネイリストにも、いろいろな民間資格があります。ネイルケアやネイルアートなどのネイルメニューを取り入れている美容室や美容サロンでは、そうした資格を持っていると仕事の幅を広げることにもつながります。
毛髪診断士
毛髪診断士は、日本毛髪科学協会が認定する資格です。毛髪に関する知識と、毛髪の状態を観察できる技術を持つのが毛髪診断士です。
育毛の専門知識を得られるので、薄毛や脱毛で悩むお客様に有効な提案をできるようになります。
着付け技能検定
着付けに関する民間資格もいろいろあります。着付け技能検定という国家資格もあります。
これがあると、着付けのメニューがある美容室、美容サロンで仕事の幅を広げることができます。
着付けがカリキュラムに入っている美容学校もあります。
まとめ
美容師国家資格取得後のキャリアは長く、また、先がいくつかに分かれていることをお分かりいただけましたでしょうか。
美容師以外の美容関連の職業に就く選択肢もありますし、美容師として経験を重ねてキャリアアップしていく選択肢もあります。
美容師のキャリアアップには技術の向上が欠かせません。地道に1つ1つステップアップする覚悟が必要でもあります。そのために有効な、いろいろな資格もあります。
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