苦しく厳しいアシスタント時代を過ごし、ようやくスタイリストになれました。ついに念願だった「美容師になりたい」という夢を叶えたわけです。
しかし、それで必ずしもバラ色の毎日を送れるわけではない、のかもしれません。
スタイリストとは
スタイリストは美容室や美容サロンなどでシャンプー、カット、カラー、パーマ、ヘアセットなどの施術を行う美容師のことです。多くの美容師志願者が、一般的には2~4年くらいと言われるアシスタント期間を経て、スタイリストになります。
アシスタントはいわばスタイリストの助手です。スタイリストこそが、美容師の主役と言って良いでしょう。活躍によっては、周囲の憧れの対象にもなります。
それがスタイリストです。
スタイリストの悩み
下積みのアシスタント期間は終わったのですから、スタイリストは楽しいことはいっぱいで、夢見ることもめいっぱいのはずですが、そうもいかないのが人生のようです。
派手な職業にも見えるスタイリストにも、いろいろな悩みがあるようです。
ちなみにスタイリストの平均月収は約30万円。人によって金銭感覚はまちまちですが、それでも「ものすごい高給!」と、!マーク付きで思う人は多くなさそうです。
給料が歩合制になっている美容師も多いですが、歩合の割合があまり高くないと、指名が増えても給料はあまり上がりません。
一方、カリスマ美容師と呼ばれるクラスになると、年収1000万円を超えるということも珍しくないようです。
売り上げに貢献できている自信がない
スタイリストは美容師という職業の中心人物ですから、経営者からは集客や売り上げ向上への大いなる貢献を期待されます。
しかし、スタイリストになったばかりであればなおさら、すぐに常連客が増えるわけではなく、スタイリストとしての修業が始まっただけ、という日々が続く可能性があります。
経営者からは「1日も早く稼げるスタイリストになってほしい」というプレッシャーがかけられますから、それを「すごいプレッシャー」と感じる人も多いでしょう。
多大なプレッシャーはストレスにもなります。
そんなとき、できることは、焦らず、地道に技術を高め、お客様とのコミュニケーションに力を入れて接客術も高め、同時に美容関連の最新トレンド情報もこまめに集め、スタイリストとしての技能を上げていくしかありません。
そうして余計なことは考えず、粛々とトップスタイリストを目指し、日々修練しましょう。
後進の指導が難しい その1
スタイリストの仕事はお客様のカットだけではありません。後進、つまりアシスタントの指導・育成もしなければいけません。
アシスタントにいつまでもアシスタントをさせていたら、きっと店を辞めてしまうでしょう。きちんと人材育成し、新しいスタイリストに仕上げなければ、店の発展もありません。
スタイリストになった人は、当然自身のアシスタントとしての経験があるので、アシスタントの育て方も分かっているつもりになってしまいます。
しかし、ところ変われば品も変わり、人が変われば受け取り方も変わるものです。解ければたのしパラダイスです。
自分がアシスタント時代に教わったように教えても、人によって理解の早さ、技術を身に付ける早さも違います。
ですから「なぜこんなことも分からない!」「なぜこんなこともできない!」と怒っても仕方ないわけです。アシスタントを委縮させては、かえって逆効果です。
自分がかつて「見て覚えろ」と言われ、1つ1つていねいに教えられなかったのに今の自分があるからと、後進にも同じような教え方をするのは、非効率です。もし先輩から、1つ1つていねいに教えられていたら、もっと早くスタイリストになれていたかもしれません。そんな風に考え、後輩には1つ1つていねいに教えましょう。
後進の指導が難しい その2
アシスタントは下働き仕事が多く、昔の徒弟制度での弟子のような存在だと感じてアシスタントをしてきた人も、スタイリストになったからには考えを改めたほうがストレスなく、仕事を教えられます。アシスタントは「下働き専門の弟子」ではなく、「スタイリストの仕事をサポートしてくれる協力者」です。
「アシスタントがいなければスタイリストは自分の仕事をできない」わけですから、アシスタントにも感謝の気持ちを持ちましょう。自ずと教え方もていねいになるはずです。
え? 自分は先輩にこきつかわれたのに、それは不公平ですって。
「それはそれ、これはこれ」です。割り切って気持ちを切り替えましょう。
アシスタントの成長が早ければ、それだけスタイリストも効率的に仕事を進められます。
また、人に仕事を教えるということは、自分自身の仕事のやり方を振り返って確認することなので、自分自身の技能を高めることにもつながります。
そう考えると、後進の指導には大いなるメリットがあります。積極的に取り組むことをオススメします。
仕事のキャリアと私生活のバランスが難しい
どういうわけか、昔から男性より女性が多いのが美容師です。
そして女性には出産という、女性ならではのライフ・イベントを経験する人がいます。
さらに言うと、どういうわけか出産以外の育児関係のことは男性もできるのに、なぜか「育児は女性が担当」という風習が根強く残っています。
「仕事と育児の両立」について考えたり、勤務時間をやりくりしたり、子どもの事情で早退や遅刻するのも、どういうわけか女性が担うことが多くなっています。
女性が多い美容師という仕事でも、この問題が起こります。
就職してすぐのアシスタント時代は「出産はもう少し後で」と考える人が多いようです。出産前後にはやはり仕事を休むので、アシスタント時代に出産すれば、スタイリストになるのもその分、遅くなるからかもしれません。
スタイリストになった当初も、スタイリストとして常連客を抱えるようになるまで時間が必要なので、出産もすぐにはしないかもしれません。
しかし、そろそろ子どもを持ちたいと考え始める20代後半になると、マネージャーへの昇進や店長就任などの次のキャリアアップが見えてきて、タイミングを見失ってしまう可能性もあります。
いざというとき、家族の事情を優先させてくれる会社に就職したいものです。
人間関係 その1
美容師に限らず、どの職業でも多かれ少なかれ人間関係のもつれはあるものです。中には、人間関係のもつれがほとんどない職場もあるでしょうが、「多かれ少なかれある」と考えたほうが、実際に「あった」ときに委縮しないで済むかもしれません。
美容師の世界は、昇進によるキャリアアップ、そのための売り上げへの貢献など、競争社会という面が強いところでもあります。同僚や先輩・後輩の間のねたみ、そねみ、足の引っ張り合いがある会社もあるかもしれません。
誰かが自分の常連客を取ったという、お客様の奪い合いもあるかもしれません。
同僚や後輩に抜かれようが、そのことで少々下に見られようがあまり気にせず、自分なりの努力を続け、お客様に快適に過ごしてもらうこと、お客様のニーズを正確につかんで喜んでもらうヘアを提案することに集中しましょう。
人間関係も気にならなくなるかもしれません。
人間関係 その2
これまたどの業界のどの職業でもあり得ることですが、シンプルに「上司や同僚と合わない」ということもあります。「合わない」というのは、「相性」のことです。
とにかく一緒にいると、相手の細かい言動がいちいち気になるとか、大した理由もないのに「カンに触る」とかいうことです。
それなりに規模が大きい職場であれば、お互いのためになるべく距離を取ることが、この問題への対処法となりますが、美容室や美容サロンはたとえ会社として規模が大きくても、1軒1軒の店舗は小さな規模であることが多いので、イヤでも至近距離で接してしまうことになります。
「相性」には論理的な解決法はほとんどありません。一番良いのは相手と距離を取ることですが、できない場合は自分の感情を抑制するしかありません。
しかし、それも限界があります。
この場合、転職を考えたほうが良いのかもしれません。
店長とアシスタントの板挟み
トップスタイリストとして共同経営者となっている人は別ですが、通常はスタイリストにもその上に上司がいます。店長や経営者です。
スタイリストには当然アシスタント、部下のような存在もいますから、スタイリストは一般企業における中間管理職のようなものです。
自分自身が中心となってお客様のヘアカットという店のメイン業務を担いつつ、常連客をつかむために新しい情報などにもアンテナを張り、アシスタントの育成もしつつ、店の売り上げアップにも貢献しなければいけません。
これでプレッシャーを感じないようでしたら、よほどの強心臓です。それほど強心臓なら県知事にもなれるかもしれません。
中間管理職は、上司と部下の板挟みにもなります。
しかし、上司と部下の板挟み問題は大抵、コミュニケーション不足が原因です。対処法としては、上司とも部下ともじっくりコミュニケーションを取ることが肝心なのですが、中間管理職はやるべき業務が多く、なかなかじっくりコミュニケーションを取ることができないのです。
困ったことです。
キャリアアップに不安がある
美容師はアシスタントからキャリアをスタートさせ、スタイリストになることを当面の目標として日々努めます。
そのため、スタイリストになるととてもうれしいものです。
それだけに、そこで燃え尽きてしまうことが懸念されます。実際「スタイリストになってからのキャリアを考えていなかった」という人もいるようです。
美容師には、スタイリストになってからもいろいろなキャリアが待っています。トップスタイリスト、マネージャー、店長、独立開業など、さまざまです。
とは言え、スタイリストになって燃え尽きたような人は、なかなかその後のキャリアアップに集中することが難しくなったりします。最悪、将来に不安を感じてしまう人もいたりします。
アシスタント時代にはスタイリストになることが目標でしたが、スタイリストになったら「スタイリストデビューは新たなスタート地点」と気持ちを切り替え、美容師としてのスキルアップに努めましょう。日々努力を重ねていれば、きっと次の目標が見えてくるものと信じれば、不安を忘れられるはずです。
まとめ
美容師のスタイリストが抱える悩みは、突き詰めれば、他のいろいろな業界のいろいろな職業の人が同じように抱えていることかもしれません。
悩みは1人で背負い込んだりせず、上司、先輩、同僚、後輩、友人、家族ら、周囲の人に相談しつつ、対処していくと、何とかなるかもしれません。
本当に行き詰まったら、スッパリ辞めて違う店で勤めるか、または美容師以外の美容関連の仕事に就くか、もしくは全く違う職業に就くことも考えましょう。いざというとき、「辞める選択肢がある」と思っていると心強いものです。
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